Misakiの曼荼羅ブログ

人間と自然、日本と世界、地球と地域、女と男などの臨界点を見据えながら、日々の出来事を綴るブログ

宇宙が教えてくれる”共存の思想”

美咲です。

トランプ氏が大統領に就任してから、一週間になります。彼が就任後に出した移民の入国制限令で、全米がすでに混乱しています。と言うか、全世界が…。また、メキシコとの国境にグレートトランプウォール”なるものを本気で建設するようです。私は日本人です。日本は移民も難民も基本的に受け入れない国ですから、批判やジャッジする立場にはないかもしれません。

けれども、宇宙から見たら、このトランプ大統領の施策はどう見えるのでしょうか。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/2e/STS-95_Florida_From_Space.jpg

画像引用:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/2e/STS-95_Florida_From_Space.jpg

 

「視覚的」に地球は一つ

元米国宇宙飛行士のチャールズ・ピート・コンラッド氏は、初めて宇宙に出た時の様子をこのように述べています。*1

 1965 年8月、ゴードン・クーパーと私はジェミニ5号に乗って宇宙に向かいました。私にとっては初めての宇宙体験であり、本当にスリリングな経験でした。ジェミニの操縦席はほとんど垂直についていたので、見えるのは青い空だけでした。その青さが上に上がれば宇宙の黒色に変わってきました。はっきり覚えているのは打ち上げの時に船外を蜂が飛んでいたことです。ロケットに点火した時に窓にとまっていたのですが、はたして彼はどうなったでしょうか。

 私たちのように宇宙に出ることができた人間は、地球が遠ざかってゆく様子を見ることができます。最初に気がついたことは地球には国境がないことです。川や海、山という境界線ははっきりと見えるのですが、国境など見えないのです。ですから視覚的は地球は一つであると分かります。(『G-TEN No57 心の宇宙・宇宙の心』「宇宙の平和は地上の平和ー月に立ちて想う」チャールズ・コンラッド元米国宇宙飛行士)

 宇宙から見たら、”地球は視覚的に一つ”であったということを、科学技術の最先端におられた宇宙飛行士が客観的に述べておられました。川や海、山という境界線ははっきりと見えたけれども、国境などなかったということなのです。

 ジェミニ五号では、秒速7キロメートルの高速で宇宙空間を飛行されたそうです。正確には1分で460キロメートル。90分で地球を一周するスピードです。いろんな宇宙から見た地球のスライドを見せ説明されましたが、モロッコあたりの景色は綺麗だったということです。オーストラリアの砂漠が黒く見えたのも印象的だったとのこと。これらの景色を見たときに、コンラッド氏はヒューストンの管制塔に”地球は本当に丸いのだ”と言ったと話しておられました。(この宇宙での体験記は非常に面白く、他では読めないのでもっと書きたいのですが、またいつか気が向いたら書きます)

"Not Divide and Co Exist"ー共存の思想

私たちが、世界を考える時、どうしても世界地図や地球儀を連想してしまいます。それは国によって色分けされていると思いがちだということです。けれどもこのコンラッド氏の話では、地球には色分けなどされていないのです。コンラッド氏が宇宙から地球を見て感じたものは、その時横で講演を聞いてらっしゃった河合隼雄先生いわく、”分けられない一つとしての地球体験”だったのです。

1986年の国際シンポジウムで来日されたジョゼフ・ニーダム先生は自然科学はその本質からして分割と統治をしていると話されていました。それはつまり「divide and rule (分割と統治)」昔の帝国主義のモットーであったのですが、これが自然科学にも当てはめられるとニーダム先生は述べられました。いろいろなものを分けてゆき、その関係を調べ、そして支配していくわけなので、発想の根本は同じなのです。けれども自然科学の頂点に立った宇宙飛行士のコンラッド氏が”地球の全体、宇宙の全体”を考えるべきと言われたのです。自然科学の視点とは反対の視点がそこにあったので、これはすごいパラドックスだと河合隼雄先生は述べられたのです。

 共存の思想:

井上:一九八六年の天理国際シンポジウムで、先生に基調講演をしていただました。そのときに、「not divide and co ‐exist 」というお話しを伺いました。「分割せずに共存する」という意味ですが、私は新「つながり」思想の誕生あると捉えています。宗教と科学や国際的利益の追求の仕方も、divide して、co ‐exist を求めようとするものの、現実にはco ‐exist にはなっていない現代におけるさまざまな分野に、先生のこの「つながり思想」は応用出来ます。

河合:「分割して統治する」(divide and rule )というのは植民地主義です。これが科学と結びつくと、科学で全部片付けるという、いわば科学帝国主義になる。グローバリーゼーションは下手をすると、中心になる者が自分の思い通りにルールをこしらえdivide して統治します。アメリカの考え方です。

しかし、あえてdivide しなくとも、おのずから分かれますよ。「あんたとおれは、やっぱり違う」といった感じで。ルールによって、無理に分けることはない。

コスモス No.2  「人と物とのつながりの回復 河合隼雄文化庁長官に聞く』より 聞き手:井上昭夫 天理大学教授

トランプ大統領はお金持ちなので、一度ぜひ宇宙飛行の旅行に行かれたらいいのにと切に願います。イスラム教徒全体を忌み嫌ったり、障がい者のジャーナリストをからかったり、多様性を排除するその姿勢に、アメリカだけでなく世界の将来が心配です。

アポロ9号で宇宙に行き船外活動をしたラッセル・シュワイカート氏にも井上氏はあったそうですが、シュワイカート氏の宇宙体験の言葉は

”地球が人類とnot divide and co ‐exist の関係にあることを納得させてくれました”と、井上氏は『コスモスNo2』で述べていました。

「私の下には真っ青な、美しい 地球がありました。その風景は 信じられないほど美しいものでし た。完全な静寂の中で、私はただ一人、素っ裸で宇宙に浮かんでいると感じたのです。その時、突然こんな思いが私を捉えました。 『どうして私はここにいるんだろ う?私はいったい誰だ?そうだ!ここにいるのは私ではなく、〝我々なんだ!私は、いや、我々は、今まさに地球に育まれた命が、地球の子宮から生まれ出ようとする、その一瞬に立ち会っているんだ』。こうして、私という存在が、地球のすべての生命と深くつながっているというだけでなく、地球そのものと深くつながっているということを、頭ではなく心で、一瞬のうちに理解したのです

ラッセル・シュワイカート元米国宇宙飛行士『映画『地球交響曲第1番』より

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/e/ec/RustySchweickart.jpg/250px-RustySchweickart.jpg

ラッセル・シュワイカート

画像引用:ラッセル・シュウェイカート - Wikipedia

 

分ける意識が悪いということではありません。意識とはそもそも物事をわけるところに特徴があるわけです。私と他人が違うということ、テーブルと花は違うということ、天と地、光と闇、女性と男性の区別。これらは実に大切なことです。そうやって自然科学も発達してきたわけですが、その先に分けられない世界があったということがすごい”パラドックス”ということなのです。

宇宙の話はいかにも非日常的です。でも、こうやって考えてみると、宇宙は健常者と障がい者を区別、色分けしただろうか…、とも障がい児を持つ母の私は考えてしまう今日このごろです。

宇宙の話はまだまだ続きます。

んじゃねー。

 

 

 

 

*1:『G-TEN No.57 心の宇宙・宇宙の心』 p7-8